木村健氏
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この本を知ったきっかけは、ある人に著者のことを紹介されたのがきっかけだが、日本の公立病院で小児外科部長として40才半ばまで働いたのち、米国に渡って長らくアイオワ大学教授として働き、現在は同大学の名誉教授となったという人が書いたエッセイ集だ。
読み始めると内容がとても面白く、文章も上手いこともあって引き込まれ、食事などをはさみながらも一気に読了した。
米国ではアイオワ大学での勤務の前にもニューヨーク州ロングアイランドで短期間勤務しており、その経験から一口にアメリカと言っても、ニューヨーク州での話があったり、アイオワでの経験を基にした具体的な出来事を通じての日米比較論があったりで面白い。
子供が生まれたときの出生届から自動車の免許証取得に必要な手続き・試験のやり方などについての日本と米国の違いなど、僕自身の経験とも重なった話で余計に興味深かった。
それにしても、木村健氏の専門である小児外科医療における日本と米国との違いについては大いに考えさせられた。
日本では国民皆保険のもとで全員が基本的には同じレベルの医療提供を受けることが出来ることになっているが、その一方で救急患者の受け入れ拒否から生ずる問題がほとんど定期的と言って良いほどに事件となり報道されるという現実がある。一方、米国では保険に加入していない(加入する経済的余裕の無い)人が大勢いる一方で、そうした人のためのセーフティ・ネットとして無料診療がシステムに組み込まれていたり、救急医療についてはアイオワ大学では救急患者を受け入れないことは絶対に無いと現実に同大学の教授で小児外科部長であった木村健氏は断言している。
そうした違いが生じる所以は「民主主義に関する歴史の違い」といった議論にまで行きつくが、日本における民主主義が底が薄いように見えるのは「GHQなどお上から与えられた民主主義」というところから生じるのだろう。
今回の民主党政権に関してみても、野党であった間の民主党と異なってきてしまったのは、政権を取った途端に自分たちが「お上意識」を持つことになってしまったことに遠因があるように思われる。